トップページ研修医・専攻医募集>研修を受けての生の声4

研修を受けての生の声4

生の声3へ

紹介文

平成17年 千葉大卒

私は卒後臨床研修制度導入2年目の医師になります。初期研修2年間と心臓血管外科後期研修3年間の計5年間を他院(同一の民間病院)で過ごし、医師6年目から8年目までの3年間を岩手医大でお世話になりました。
元々、先天性心疾患に対する外科治療に携わりたいと思っておりましたが、前任地の心臓血管外科は成人に対する治療を主に行っていましたので、この移籍は私にとって希望する分野へのスタート地点に立つという意味合いのものでした。
岩手医大では毎日が手術日で、基本的には1日2例(手術室2部屋が稼働)の予定手術が行われています。小児の手術には週に2日(火曜日、金曜日、手術室1部屋)が割り当てられています。小児の手術には私を含めた小児グループの者が入ります。その他の曜日に行われている成人の手術にも人員の状況に応じて小児グループの者が助手に入ります。このように書くと、成人グループと小児グループが明確に分かれているように捉えられるかもしれませんが、慢性的な人員不足と膨大な手術待機量のため、小児グループの人間は、成人兼小児という状態が実情でした。
心臓血管外科と一括りにして話をするのは適切ではなく、成人分野と小児先天性分野には大きな隔たりがあり、その二つは全く別の診療科と言っても過言ではありません。扱う臓器が同じであっても、組織の性状は全く異なり、それらを扱う技術体系に根本に同じものが流れていたとしても、その表現型は全く異なります。また、周術期管理についても、成人分野における体肺正常循環という大前提が、小児先天性分野にはありません。
私は成人分野の心臓血管外科基礎修練は一通り終えた状態で移籍してきましたが、小児については全く心得がない状態でしたので、医師6年目にして再度1年目からやり直しといった状態でした。成人の手術にも入りつつ、小児のトレーニングができたことは、自分の心臓血管外科医としてのアイデンティティを保つうえで有効に機能していたかもしれません。
さて、この文章は、これから岩手医大での心臓血管外科研修を検討している諸氏に読まれるものでありますから、その検討の一助となるようなことを書かねばなりません。
先に気になるであろう、生活にかかわる収入の話をしてしまうと、大学の収入は言うまでもなく安く、それのみでは生活できません(特に家庭持ち)が、地域診療支援(いわゆるアルバイト)の収入を含めると、市中病院勤務と比較しても遜色ない金額になります。よって、まず生活については心配する必要はありません。ただ、これは他の大学でも同じようなものでしょう。
修練は、「どのような施設で行うか」ではなく、「どの時期(学年)にどのような施設で行うか」を考えねばなりません。特に、医師になって間もない時期、あるいは専門分野に進んで間もない時期に、どのような環境でイニシエーションを受けるかが重要です。なぜ、このような事を書くかと言いますと、私自身、若い時期のトレーニングは大学病院で行ってはならないと思っています。大学病院では、単一施設からの収入のみでは生活が保障されないからです。先に述べたアルバイトにより、自分の患者にべったり張り付くことや、病院に入り浸ることができなくなるからです。岩手医大心臓血管外科はチーム制を敷いています。これは、主治医制にすると不在時に対応ができないからです。医師(心臓血管外科医師)としての基礎が出来上がるまでは、一人一人の患者に深く入り込める主治医制の敷かれた病院でトレーニングするべきです。手術以外の「人を相手にした医療」をそこで身に付けなければなりません。これは、決してチーム制のことを悪く言っているのではありません。しかし、主治医制が、チーム制に比べて若手医師の人間性・汎用性育成の面で圧倒的に優っているのは確かだと思っています。
では、ここで私は岩手医大について何をアピールしたいのかということになりますが、それは、岩手医大に来た時の私のような医師の皆さんに対してのメッセージになります。後期研修を終えて、次のステップを考えている医師の方々に検討していただきたい。外科医には「ある一定水準以上の上手い手術」をたくさん見る時期が必要だと思います。後期研修終了後からは、自分が手を動かすようになって、本当に実感を持って見ることのできる時期であると思います。この文章を読んでいる方々は、岩手医大の年間手術件数が相当数であることを知っているでしょう。成人分野では岡林教授が、小児先天性分野では猪飼准教授が、間違いなく「ある一定水準以上の上手い手術」を行っています。
岩手医大心臓血管外科は、他の大学病院のように、医局⇔関連病院の構造を持っていません。循環器センター単体での医療組織です。なので、働いている感覚としては、市中病院の一職員でしかありません。医局人事に縛られることもありません。長い修練期間の一時期を過ごす、「上手い手術がたくさん見られる病院」として選択するのもありではないでしょうか。
手術をさせてもらうことに重きを置くべきではないと思っていますが、外科医である以上、気になる事柄だと思いますので、実際の私の修練進達度を大まかに示します。成人分野の先生方の参考にはならないかもしれませんが。1年目:ある程度、単心室循環の術後管理ができるようになる。開閉胸・カニュレーション(体重による)、2年目:ASD閉鎖、3年目:VSD閉鎖(弁下型、流出路筋性部型)、iAVSD修復、PDA結紮といった具合です。おそらく、次のステップとして、傍膜様部型VSDやcAVSD、TOFといったものが来るのだと思います。
私は現在、岩手医大を出て、他の病院働いています。なので、ただ新人を引き込むためのいいところだけを述べるような勧誘文は書きませんでした。これを読んでいただいて、もし、岩手医大で修練をしてみようと思った方なら、良いところはとことん利用し、悪いところには主張し、時に変化を与えつつ、充実した修練が行えることと思います。大学医局に属さず、このようなページを見て、自分で行き先を探し、決めるのはなかなか大変な事であります。そのような中、人との出会いはとても大切です。私は岩手医大で心臓血管外科医として二人目の師匠に出会いましたが、間違いなく良い出会いであったと思っています。皆様にも良い出会いがありましたら幸いであります。

ページトップ